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僕は監獄でつくられた人間だ
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と大杉栄は言いました
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師の幸徳秋水が死刑にされたとき
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春3月くびり残された花に舞う
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と酔ったふりして踊りました
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あの人はいつも官憲に追われている
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危険な男
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それでも
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あたしはついてゆきます
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あなたは吃りのくせがあり
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あなたは原稿書いている
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暗いマッチに照らされる
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その横顔はアナキスト
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いつも刑事に終われてた
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あなたは燃ゆる火の鳥で
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あたしはついてく恋の鳥
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夜露のふかき上海の
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密航船の船底で
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たしかめあった愛などは
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忘れたように群衆の
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中にまぎれてゆくあなた
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あなたは燃ゆる火の鳥で
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あたしはついてく恋の鳥
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ともに入った監獄も
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つめたい壁にへだてられ
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信じるだけの月あかり
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美は乱調にありながら
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みだれ過ぎたる黒髪を
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せめてあたしも火の鳥と
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なって翼を燃やしたい
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大正13年9月、
アナキスト 大杉栄と
作家 伊藤野枝
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は憲兵隊の甘糟大尉に逮捕され、
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虐殺されました。
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監獄では、いつも一緒になれなかったが、
死ぬときだけは、
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二人一緒でした。
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